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ぷよぷよ視線測定
ぷよぷよのプレイヤーがどこを注視しているのかを測定した動画です。友人同士の測定から始まり、全国トップクラスの上級者の視線も測定しました。動画中の赤い点がプレイヤーの見ている場所を示しています。視線測定第2弾の対戦時のmomokenの視線動画(動画リスト一番左下)は必見。
ぷよぷよ視線測定
視線測定第1弾:友人同士で測定。動画中の考察は今では怪しい部分、誤ってる部分があります。
視線測定第2弾:上級者を呼んでの視線測定動画。
実験の方法
視線測定の実験装置を用いて注視している場所の画面上の座標を500Hzで記録しています。(実験装置を使える環境が手に入った経緯は一番下の段落を参照。)
また、視線を記録するだけでなくリアルタイムで視線の座標から一定の半径の円領域以外の部分をマスクする(視野制限する)ことも可能です。
これを使っていろいろやったのが上の動画です。
動画中の赤い点は計測で得られたデータを連番画像に合成したもので、注視している場所を表します。
サーチライトのようなものは上述の視野制限です。
視線測定第2弾の内容
2月12日にTomさんとmomokenさんの協力を頂き、プレイを収録しました。
動画は1つにまとめてではなく、実験の種類ごとにシリーズで出していく予定です。
とこぷよで2連鎖を素早く行うタスク、とこぷよで大連鎖を組むタスク、そして対戦の3種類です。
後半のタスクほど注視すべきポイントや把握すべき情報が増えていくのがポイントです。
前者2つに関しては解説中心の動画にして、対戦は解説を控えて動画に集中してもらう予定です。
それから赤い点を少し大きくして十字線を加えたので視線の動きがだいぶ見やすくなる予定です。
進捗状況 ※2010年3月5日に全てアップ完了
思ったより時間かかりそうです。
まず視線データの合成作業自体が重いこと。連番画像を吐き出してプログラム使って合成してまた動画に戻すので……。
それから解釈が難しいこと。
赤い点はあくまで注視している箇所であって、そこだけを見ているとは限らないからです。被験者の方から視野制限したときの感覚や、自覚として周辺視野で何を把握しているかをヒアリングする必要性を感じています。
そのため、おそらく
一旦全ての実験の動画を合成→自分なりに解釈→被験者の方に質問→解説の作成→ニコニコ用にエンコしてアップ
という流れになります。
今(2月15日)は動画の合成が7割方終わったところなのでそれなりの日数がかかりそうです。
2月18日:合成は終わったんですが、画面遷移のカットなどの編集で手間取ってます。でも動画編集全体として9割方終わったかも。
2月18日(夜):動画の編集終わったーーーー!とりあえず被験者のお二人にヒアリングをするとともに自分なりに解釈を勧めようとしているところです。レベルの近いお二人ですが、それでも視線の動きがかなり違うことが面白いです。より変態的なのはmomokenさんにように思えますw
2月20日:おそらく今日に2連鎖タスクの動画を上げられると思います。対戦に比べるととても地味ですが、視野制限MAXでの状態は多少なりとも驚くのではないかと。
2月23日:すみません、遅れましたが今日の夜にTomの視線(とこぷよ編)をアップする予定です。
考察
上で紹介した動画(第1弾のテスト動画)の結論は、ざっくり言うとぷよが上達するにつれて周辺視野を多く利用するようになる、というものでした。
この結論自体はおそらくそんなに間違いではないと思ってます。実験でお世話になっている研究室で聞いた話だと、ぷよぷよに限らず一般にゲームの上手い人は周辺視野を有効に活用しているらしいです。
ただ、うp主のとこぷよの動画で、ネクスト・ネクネク欄に「全く」目をやらないのは私個人のスタイルである、もしくは中くらいの実力の人特有の現象である可能性が出てきました。
これについてはまだ不明な点が多いので、動画の合成と考察が進んでからまたコメントしようと思います。
3月16日:サンプルが少ないので個人的推測に過ぎないんですが、誤りを恐れずに書くことにします。
初級者くらいの人:毎回ネクスト欄に目をやり、落下させるツモを目で追ってしまうため積みが遅い
中級者くらいの人:人それぞれのスタイルを持っていると考えられるが、たとえば自陣を注視しネクスト欄を周辺視野で見るなどして積みの速度をあげている
上級者くらいの人:人によって違うかもしれないが、落下させるツモを目で追ったり自陣ばかり注視したりはせず、ネクネクが出現するタイミングでネクスト・ネクネク欄を注視し、ぷよを設置した瞬間だけ自陣を注視する。対戦の場合は自陣注視が相手陣注視に変化したり、相手陣ばかり見ることがよくある
あくまで少ないサンプルの中でも個人的予想ですので、鵜呑みにはしない方がいいでしょう。
参考までに。
視線測定シリーズ第2弾の2連鎖タスクについて。(2月23日)
2連鎖タスクにおけるまとめは以下の通り。
1. 上級者でもネクスト欄から自陣への視線の動きが基本
2. 上級者は連鎖後の形まで簡単なものは完全に見ずに把握できる
3. とはいえ記憶できる量には限界がある
4. 上級者は見ないで意図した場所にぷよを置けるほどの操作力を有する
また、動画中のコメントで指摘を頂いたのですが、上級者が落下させるぷよ(ツモ)を目で追っていないことも重要な特徴だと考えられます。
これはやはり高度な操作力によるものなのでしょう。
視線の流れとしては、ツモを設置→自陣を確認して次のツモを落とす場所を判断→ツモを落下させながらネクスト・ネクネクを確認→ツモを設置、となっています。
今後アップする予定の対戦編では落下させるツモを目で追わないことが相手陣の凝視において役立っていることが分かると思います。
視線測定シリーズ第2弾のとこぷよについて。(2月27日)
とこぷよでの視線測定・視野制限のまとめはこんな感じです。
1. 2連鎖タスクと同様、上級者は落下させるぷよを目で追っていない
2. 同じ上級者でも目線の動かし方に違いがある(Tomさんはある程度まで積むと自陣を注視してネクスト欄を周辺視野で確認する傾向があり、momokenさんは最後までネクスト欄に視線を動かす傾向がある)
3. 視野制限はLv2からLv3になったときのパフォーマンスの低下がはっきりしていた(その一方で、記憶力によってカバーし、Lv3でも複雑な連鎖をしっかり組み上げている場面があった)
4. momokenさんが視野制限Lv3でkenny式の18連鎖を出していたのは印象的(定形だと記憶による把握が容易なためか)
momokenさんの感想としては、制限無し>Lv1≧Lv2>>>Lv3とのことです。
2連鎖タスクと併せて考えると、やはり上級者の自陣の記憶力・把握力と操作力が想像以上に凄いなと思いました。
対戦で上級者並みの凝視をするためにはまずこれらの力を鍛える必要があるように思えます。
視線測定シリーズ第2弾の対戦について。(2月27日)
対戦(時間の関係で10本勝負)の結果は以下の通り。
Tom(視野制限無し)VS momoken: 6-4
Tom(視野制限Lv1)VS momoken: 5-5
Tom(視野制限Lv2)VS momoken: 8-2
Tom(視野制限Lv3)VS momoken: 3-7
momoken(視野制限無し)VS Tom: 7-3
momoken(視野制限Lv1)VS Tom: 6-4
momoken(視野制限Lv2)VS Tom: 4-6
momoken(視野制限Lv3)VS Tom: 4-6
Tomさんの視野制限Lv2だけイレギュラーな結果となっていますが、後は順当な結果な感じがします。
ただ、視野制限無しの場合の二人の勝敗を見るとばらつきが大きいのでたまたまな気もします。
やはりぷよぷよで10本勝負はサンプルとして少なすぎたかも。
視野制限Lv3でも善戦しているあたりはさすがでした。
momokenさんの感想では、対戦の場合だと視野制限Lv1で既にかなりのやりにくさを感じたようでした(相手の連鎖の全体が見られないからだそうです。)
対戦で凝視をする場合には相手陣に目をやってから(もしくは相手陣に視線を移動している途中?)どこを注目すべきかをまず判断するのですが、その際に使用する周辺視野は相当広いと推測されます。
視線の動きの全体の印象としては、想像以上に相手陣を見ていることに驚かされました。もっとも、とこぷよや2連鎖タスクでの把握力(記憶力)・操作力を見ていると、納得はできるのですが。
上級者レベルの凝視をするためには、落下させるぷよを目で追わずに意図したところに置けること(操作力)、自陣を見ないで土台を組んだり、副砲を完成させて発火すること(把握力と操作力)などといった力がまずは必要なのではないかと推測します。
「凝視には操作力が必要だ」とはmomokenさんの言葉でもあります。
実験の発祥とか
うp主がとある授業を履修したのが始まり。
当初はタイトルに含まれる「認知科学」という用語に興味があって普通に授業を聞いて単位を取るつもりだったのですが、いざ行ってみると講義はほとんどなくて自由に実験をしてレポートを出して単位を貰うというものでした。
まあ認知科学系の実験なら楽しそうだしそのまま履修しようと思ってその研究室の説明とか聞いてたんですが、どうやらその研究室では一部の人がゲームにおける眼球運動とか周辺視野の利用について研究しているらしく、なんと視線(注視している場所)を計測する装置が置いてありました。
で、実験の内容は何でも良くて自由にやってくれとのことだったので、よしじゃあぷよぷよの視線でも計測してみるか、となったわけです。
ちょっと年末は自分の研究室の研究で忙しくて放置しちゃってたんですが、1月にまず実験の内容を考えて、装置の使い方を教えてくれた研究員の方と自分とで簡単なテストをしてみました。するとやっぱりこれは面白い実験になるだろうということに。
とりあえず実験の内容を確定して、学部時代の同期のぷよ仲間(何故か3人もいるw)に来てもらって実験のテストをしてみました。
こうしてできた動画が上に紹介した視線測定動画の第1弾です。
そして結果が面白く新たな疑問も生じたので私より格上の人や上級者を呼ぼうということになり、上級者はTomさんに声をかけることにしました。
するとTomさんが快諾してくれ(全くの初対面にも関わらず)、さらにTomさんがmomokenさんを誘ってくれて実験の計画が成立しました。お二人ともどうもありがとうございました。
実は同日に身内の格上の人も収録したのですが、機器との相性であまり上手く測定ができず、今のところどこまで参考にできるかは不明です。参考にできたら考察の材料にするつもりです。